AGA治療における成長因子注入治療とは

 
AGA(男性型脱毛症)治療は基本的にフィナステリドなどの内服薬でまず治療を行うことが一般的ですが、AGA専門のクリニックや美容皮膚科では頭皮に成長因子(グロースファクター)などの成分を頭皮に直接注入する「注入治療」や「毛髪再生療法」と呼ばれる治療も行われています。

では注入治療とはそもそも具体的にどのような治療なのか、そしてAGA治療における成長因子注入治療とはどの様な効果が期待できるのかなどを解説します。

AGA治療における注入治療とは

フィナステリドやデュタステリドなどの投薬によって効果をもたらす内服薬治療に対して、様々な器具を用いて成長因子(グロースファクター)など薄毛対策に有効な成分を直接頭皮に注入する治療方法を指します。

毎日自身で服用する治療薬と違い、基本的には定期的にクリニックに通院し医師や看護師により処置室で注入治療が行われます。

なお、現代医療においてAGA治療はフィナステリドやデュタステリドなどの治療がベースとなる為、注入治療のみを行うクリニックやその症例は少なく、治療薬による改善効果が乏しい場合や、より短期的にAGA治療の効果を期待する場合に投薬治療と注入治療が並行して選択されることが多い方法です。

注入治療の種類

AGA治療において注入治療は大きく2種に分類することができます。どちらも頭皮や髪の毛にとって有効な成長因子等の成分を注入することに違いはありません。

育毛メソセラピー

メソセラピーとは注入という治療自体を指す表現であり、治療の種類や方法、効果は治療を行っているクリニックによって差があります。基本的に成長因子(グロースファクター)を注入液に配合することがベースになりますが、名称は「育毛メソセラピー」「AGAメソセラピー」「毛髪再生療法」「再生メソセラピー」など様々で決まりがあるわけではありません。

AGA治療におけるメソセラピーの役割は、育毛に必要な成長因子(グロースファクター)などの有効成分を頭皮に直接注入して薬剤を浸透さることで髪の毛の成長を促すことです。

一般的に成長因子(グロースファクター)を含むタンパク質から生成した成分、治療薬と同様の有効成分(フィナステリド やミノキシジル)や、頭皮に必要な栄養素(ミネラルやビタミンなど)が使用されるケースがほとんどです。

なお、具体的な成分の種類や配合比率は個々のクリニックによって異なるため、成長因子注入治療を受ける際には医師からしっかりと説明を受けた上で治療を開始しましょう。

育毛メソセラピーについて詳しくはこちらをご覧ください。

またミノキシジルやフィナステリドの有効成分について詳しくはこちらをご覧ください。

詳しくはこちらの記事をご覧ください

HARG療法

Hair(毛髪)、Re-generative(再生)、theraphy(療法)の略称が「HARG(ハーグ)」療法と呼ばれている治療方法です。

こちらも育毛メソセラピーと同じように成長因子(グロースファクター)を含むタンパク質から生成した成分や、アミノ酸やビタミン入りの栄養素などを配合したHARG専用の薬剤を使用して薄毛の改善に努めます。成長因子の働きによって育毛と発毛の双方に効果を期待することができます。

HARG療法について詳しくはこちらをご覧ください。

育毛メソセラピーとHARG療法の違い

この2つの治療は名称こそ違うものの、成長因子といわれる細胞増殖を促進するタンパク質を中心とした薬剤を用いる点や、期待される効果は同じです。

では、なぜ名称が異なるかというと、育毛メソセラピーは治療の一般名称ですが、HARG療法は韓国で開発された特定の成長因子の組み合わせを指すブランド名という違いがあるからです。

その為、HARG療法は治療を行っているクリニックは全て同一の「HARGカクテル」という、同一の成長因子の組み合わせの薬剤を使って治療を実施しています。その為、A病院、B病院と全く異なる病院であっても同一のHARG療法という名称を目にすることがあります。

この事からも、名称こそ異なるものの特定の成長因子の組み合わせを使用するHARG療法、クリニック毎に成長因子の組み合わせが異なる育毛メソセラピーではありますが、おおきくその薬剤の成分に差異は無いため、その効果も大きな差はなく同様に期待できるといえます。

成長因子によるAGA治療効果

健康で丈夫な髪の毛の成長にとって、タンパク質から生成された成長因子は重要な役割を果たします。成長因子には血行の促進やヘアサイクルにおける「成長期」の延長、髪の毛の形成に必要な成分の生成、血行促進などの効果を期待できます。

成長因子注入治療において用いられる代表的な成長因子は以下の通りです。

FGF(繊維芽細胞増殖因子)

20数種類におよぶ多機能タンパク質。既存の血管から新たな血管枝を作り出す血管新生や皮膚の修復に影響するものです。数種類のFGF因子は髪の毛の成長に関与しています。

KGF(ケラチン細胞増殖因子)

FGFに属する因子の別称であり、名前の通りケラチンの生成を補助する成長因子です。ケラチンは主に髪の毛や爪の形成に役立っています。

IGF-1(インスリン様成長因子-1

主に肝臓などで生成される成長因子で、知覚神経(感覚を中枢神経に伝達する末梢神経)を刺激することで分泌が活発になる特徴を持ちます。また、毛包の細胞増殖とヘアサイクルにおける成長期の延長に関与するとされています。

上記はあくまで代表的な成長因子で、必ず育毛メソセラピーやHARG療法に含まれる訳ではありません。

※育毛メソセラピーはクリニックで成長因子の組み合わせは異なります。
※HARG療法は成長因子の組み合わせは同じです。

成長因子の注入方法

一概に成長因子注入治療といっても注入方法はクリニックにより様々です。大別すると注射器を使用する方法と使用しない方法に分けることができます。以下に代表的な注入方法をご紹介します。

主な注入治療の種類

※スマートフォンでご覧の場合はこの表を横にスライドができます。

使用器具 方法と特徴 痛み
注射器 パピュール法(注射針で頭皮に薬剤を注射。表皮と真皮の間に治療薬を注入し有効成分を浸透させる方法) 強めの痛み
注射器 ナパージュ法(注射針で頭皮に薬剤を注射。パピュール法に比べ、細かく注射する方法) 痛みを伴う
針のついたローラー ダーマローラー法(針付きのローラーを頭皮上で転がすことによって薬剤を注入する方法) やや痛む
レーザー照射 フラクショナルレーザー法(針を使わず、特殊なレーザーで頭皮に穴を開け、薬剤を注入する方法) ほぼなし
電気穿孔 エレクトロポーション法(電気パルスによって頭皮のに隙間を開け薬剤を浸透させる方法) ほぼなし

注入方法はクリニックや美容皮膚科によって異なります。注入治療を希望する場合は、クリニックや皮膚科の説明を受け、自身にあった方法を選択しましょう。

成長因子注入治療の副作用

注入する成長因子は元々体内で生成され分泌されているたんぱく質である為、体にとって害になる可能性は低く、副作用は起こりづらいとされています。しかし、頭皮に直接施される治療であるため注入する行為による副作用の報告は存在します。

特に注入する方法やその技術によりその度合いは異なり、治療後にかゆみや痛み、発疹などの皮膚症状、また頭部の腫れや赤み、術後の一時的な痛みや内出血が報告されたケースもあります。しかし、どれも軽度なものであり重篤な副作用の報告はありません。

また、薬剤にフィナステリドやミノキシジルなどの成分が含まれていた場合は、投薬治療同様の副作用リスクが発生するおそれがあるでしょう。なお、育毛メソセラピーとHARG療法の副作用にも大きな差異はありません。

フィナステリドやミノキシジルの副作用について詳しくはこちらをご覧ください。

詳しくはこちらの記事をご覧ください

成長因子注入治療の治療期間と費用

育毛メソセラピーやHARG療法の治療は1回で完了するわけではありません。投薬治療と同様、継続的な治療が必要になります。治療の回数はクリニックや皮膚科のプランによって異なりますが、一般的に月1〜2回程度の治療を半年〜1年間継続する場合がほとんどです。

費用に関しては、クリニックや皮膚科によりその回数や期間、そして注入する頭部の面積(生え際のみや頭部全て等)で大きくばらつきがあるため明言することはできません。

ただ、2種類の治療方法を比較すると、育毛メソセラピーの料金のほうが比較的安価であり、より多くの成長因子を注入する傾向があるHARG療法は治療費用が高額になる傾向がみられます。

注入治療の評価

AGAに関する治療方法や、関連する臨床試験などの実例を定めた日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」には、注入治療についての記載を確認することができます。

この資料中の、成長因子導入および細胞移植療法関連の章には、脂肪組織由来の幹細胞発毛促進効果について、“比較試験や研究は行われているとしながらも、まだ先進医療の段階にあり安全性なども含めて十分に検証されているとはいえない”と記されています。

そして、今後期待される治療法ではあるものの、現時点では広く一般に実施できるとは言い難く行わないほうが良いとして、その評価を推奨度「C2」と結論づけています。

参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」

理論的にはAGA治療において一定の効果が認められますが、まだまだ日本において先進医療の段階にあり臨床数が足りないことが推奨度「C2」の大きな原因であることが伺えます。

成長因子注入治療の現状

育毛メソセラピーおよびHARG療法といった注入治療が徐々に日本でも浸透してきた昨今。AGA専門のクリニックや美容皮膚科の公式HPを閲覧すると、少しづつ注入治療実績を確認できるようになりました。

ガイドラインの記載にも確認できるように、注入治療は他の治療方法に比べ、新しい先進医療として位置付けられています。

検証不足が懸念され現状のガイドライン評価は低い治療方法ですが、治療を受けた患者の副作用や体に対する負担も少なく、将来性の高い治療方法であることは確かです。

投薬治療との併用

現在のAGA治療における第1選択は投薬治療であるといわれています。日本皮膚科学会ガイドラインの推奨度は最も高く、AGA専門のクリニックや美容皮膚科に通院しても投薬から治療をはじめるケースが多いでしょう。

投薬治療は最も代表的な治療方法であり安全性も証明されています。しかし、AGAのキャリアや進行状況、そして体質などにより、投薬治療によって思うような効果が得られないケースも多数あります。

注入治療は投薬治療の効果を補うための第2選択という位置付けが一般的です。注入治療のみを行う場合もありますが、多くの場合フィナステリドやデュタステリドといった内服薬と併用して治療を継続する方法が用いられています。

頭皮や髪の毛に良いとされる成長因子や有効成分を直接注ぎ込む注入治療は、投薬治療の効果を補い、より高い発毛・育毛を実現できる可能性を持っています。

記事の監修医師

正木 健太郎銀座総合美容クリニック 院長
【略歴】
・平成14年 岡山大学医学部卒
・平成20年 銀座総合美容クリニック 開院
【所属学会】
・日本形成外科学会 正会員
・日本臨床毛髪学会 正会員
・日本再生医療学会 正会員
・日本美容外科医師会 正会員

監修医師の詳細情報