AGA治療は一生継続するべき?継続期間や治療のゴールとは

AGA(男性型脱毛症)は頭頂部と前頭部、いわゆるつむじと前髪の生え際から抜け毛が増えて、徐々に頭皮が透けるようになる進行性の薄毛の疾患です。

AGA(男性型脱毛症)のメカニズムについて詳しくはこちらをご覧ください。

AGAとは?薄毛になるメカニズムや原因と治療法

このAGA(男性型脱毛症)治療は、投薬治療をすることによって、多くの方で改善効果が認められています。しかしこのAGA治療ですが、始めたらいつまで続けるべきか、一生続けるべきなのか、十分な発毛を実感したらすぐにやめても良いのか、果たしてどれくらいの期間続けるべきなのか、治療期間について気になる点も多いかと思います。

というのも、AGA治療の効果を実感するには個人差があり、数か月で改善を実感する方もいれば、半年以上継続しても効果が見られない場合もあります。

また、どのような毛髪状態を治療のゴールにするかによって、期間は異なってきますが、AGAは症状の特性上、一度治療をはじめたら最低でも半年以上は継続することが重要と言われています。

しかしながら、AGA治療は保険適用外のため、全額負担するわけですから、長期間に及ぶ治療の場合費用の負担額も大きくなってしまいます。

そこで、この記事では今後AGA治療を検討している方や、現在AGA治療を行っている方に向けて、治療の期間や継続の有無、AGAに治療は一生続けなければならないか等の疑問について解説します。

ます、結論から申し上げるとAGA治療のゴールは医師が決める物ではなく自分自身の頭髪の満足度で決めるものです。

というのも、AGA治療は病気の治療ではなく悩みの治療だからです。また、基本的には一生続ける治療でもありません。

では、その理由に関して以下から詳しく解説していきます。

AGA治療の基本

まずはAGA治療とはどの様な物なのかという基本的な情報を解説します。

AGA(男性型脱毛症)は完治しない

AGAは男性ホルモンに起因して発症する進行性の脱毛症です。

主に成人以降の男性に多く見られる脱毛症であり、前頭部や頭頂部の髪の毛を中心に抜け毛が起こり薄毛へと発展していきます。AGAは1度発症すると何らかの対策を施さない限り進行を止めることはできません。

現在ではフィナステリドなどAGA治療において効果的な治療薬が開発され一定の改善効果を期待することができますが、あくまでもAGAにおける薄毛という症状を改善する対処療法であり、AGA自体を根治する薬ではありません。

AGA治療の目的

上述の通り、AGAは完治させることのできない脱毛症であるため、一般的に病院や専門のクリニックで行われている治療はAGAにおける薄毛という症状を「現状の状態維持」や「進行の抑制」、またはミノキシジルを利用して「発毛」させ髪の量を増やすといいった事をゴールとしており、AGA自体を根治(原因を取り除き完治)することは現代医療では出来ません。あくまでAGAにより薄くなった毛量を改善するといった対処療法になります。

髪の毛のヘアサイクルについて

髪の毛にはヘアサイクル(毛周期)と呼ばれる一定の髪の生え変わりの周期が存在しています。AGAの発症原因と完治が難しい理由にはこのヘアサイクルが深く関係しています。

正常な髪の毛は「成長期」「退行期」「休止期」の3つの期間からなるヘアサイクルが健全に機能することによって保たれています。

通常のヘアサイクル

AGAを発症するとヘアサイクルに異常を来たし、髪の毛の「成長期」が大幅に短縮されてしまうのです。成長期を短縮された髪の毛は細く短くなり、やがて薄毛へと繋がっていきます。

AGAになった場合のヘアサイクル

ヘアサイクルには特筆すべき重要な特徴が存在します。それは「ヘアサイクルは生涯で決められた回数しか行われない」という事実です。

通常のヘアサイクルは2年〜6年程度で一巡すると考えられていますが、AGAの影響を受けたヘアサイクルは数ヶ月程度まで短縮されてしまう可能性があります。

AGAによってヘアサイクルが短縮された頭皮には薄毛の兆候が現れますが、症状がさらに進行しヘアサイクルが終わりを迎えると、髪の毛は生えてこなくなってしまうのです。

そして、現在の医学ではヘアサイクルが終わった頭皮から髪の毛を再び発毛させることはできません。AGAが完治させることのできない脱毛症である理由はこのメカニズムにあるのです。

基本的なAGA治療のアプローチ

AGA治療は「進行の抑制」と「発毛の促進」という基本原則の元に行われています。

現在治療の第一選択と考えられている方法は、薬剤を用いた治療方法であり経口摂取によってAGA改善を試みる内服薬と、頭皮に薬剤を直接塗布する外用薬の2種類が存在します。

使用される薬剤や有効成分は様々ですが、「フィナステリド」および「デュタステリド 」内服薬、「ミノキシジル」外用薬と呼ばれる3種類の有効成分が一般的な治療薬として用いられています。

AGAに有効な治療を評価した日本皮膚科学会が定める「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、最も推奨度の高い治療方法としてフィナステリド、デュタステリド 、ミノキシジル外用薬が紹介されており、AGA治療において一定の改善効果を期待することができます。

AGA治療は継続する必要がある

AGAは治療によって改善効果を実感できるかもしれません。しかし、それは治療薬の効果によって症状を抑制しているに過ぎないのです。

治療によって症状が改善しても疾病自体は完治していないため、治療を中止すると症状は再び現れてしまうでしょう。

効果を維持するためには継続的な治療が必要になります。

効果を実感するまでの期間

AGA治療薬はどの薬の種類に限らず改善を実感できるまでに一定の期間が必要です。

では、具体的にどの程度の時間が必要なのでしょうか。

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」には、様々な臨床試験※1やランダム化比較試験※2による治療方法の検証が記載されています。以下に日本人を対象に薬剤を用いて行われた治療方法による臨床結果をご紹介します。

※1「臨床試験」
薬剤や医療機器など、疾病の予防や診断、治療に関わる医療手段について有効性や安全性などを確認するために行われる試験

※2「ランダム化比較試験」
新薬の臨床試験などを行う際に公平性を担保するため、新薬使用のグループと通常薬使用のグループを無作為に分け、臨床の効果・影響を測定する試験

フィナステリド

フィナステリドはAGA発症の原因とされている酵素「II型5αリダクターゼ」を阻害することによってAGAの進行抑制効果が認められている治療薬です。

ガイドラインでは414名の「日本人」男性被験者に、フィナステリド(1mg/日、0.2mg/日)を用いた観察期間48週間のランダム化比較試験が行われています。

頭頂部の写真撮影による効果判定では、1mg/日のフィナステリド使用において58%の被験者に軽度改善以上の効果があり、0.2mg/日のフィナステリド使用において54%の被験者に軽度改善以上の効果が認められています。

引き続き1 mg/日のフィナステリド投与を継続した非ランダム化比較試験※3では、2年間および3年間の内服継続により、軽度改善以上の効果がそれぞれ68%および78%の症例で得られています。

また、別の801名の「日本人」男性被験者を対象とした観察研究において、フィナステリド(1mg/日)を5年間継続して内服したことにより、写真評価において改善効果が99.4%の症例で得られ、中でも40歳未満の症例や重症度の低い症例でより高い効果を示したとの記載が確認できます。

※3「非ランダム化比較試験 」
新薬などの臨床の際に、新薬を使用したグループと通常薬を使用したグループを意図的に分けて行う試験

出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」

デュタステリド

デュタステリドはAGA発症の原因とされている酵素「5αリダクターゼ」の阻害効果が認められています。

5αリダクターゼには「I型」と「II型」が存在し、デュタステリドは双方に対して効果を発揮することでAGAの進行を抑制する効果が認められています。

国内ではデュタステリド0.5mg/日を用いた、120名の男性被験者を対象とした観察期間52週間の非ランダム化試験が行われています。

結果的に直径30μm※4以上の非軟毛数、硬毛数、非軟毛直径が52週に各々13.5/cm2※5、15.2/cm2、6.5nm※6の増加が認められています。

また、皮膚科医のパネル※73名による頭頂の写真評価では、 26週に1.34、52週に1.50、といずれもベースラインより有意に毛量の増加が認められていますが、26週から52週にかけて有意な改善があったかどうかは統計学的に明らかになっていないと結論づけられています。

出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」

※4「μm(マイクロメートル)」
長さの単位。0.001 ミリメートルと等しい長さ

※5「cm2(平方センチメートル)」
面積を表す単位

※6「nm(ナノメートル)」
国際単位系の長さの単位

※7「パネル」
パネルディスカッション。討論形式の一つ

ミノキシジル外用薬

血管拡張作用によって血流をスムーズにするほか、髪の毛の成長に関わる毛乳頭細胞に作用し、発毛を促進する作用が認められている治療薬です。

国内では1%および5%ミノキシジル液を用いた、300名の男性被験者を対象とした観察期間24週までのランダム化比較試験が行われています。

結果、脱毛部1cm2内の非軟毛数のベースラインからの増加は1%ミノキシジル群で平均21.2本、5%ミノキシジル群で平均26.4本となり、5%ミノキシジル使用群で有意に増加したことが証明されています。

(注)ここで紹介している治療方法は内服薬および外用薬を使用した方法です。AGA治療には薬剤を使用する方法以外にも効果的な治療が存在しています。

6ヶ月程度の経過観察が必要

国内で行われた臨床試験やランダム化比較試験では、主に検証期間を24週〜52週程度に設定している事例が多く、治療薬の推奨度も設定された検証期間に継続使用することを前提として評価されたものです。

効果の実感に対する感覚には個人差がありAGAの進行状況によっても異なります。

一般的には変化の実感に数ヶ月程度、薄毛の改善に6ヶ月〜1年程度の期間が必要と考えられているため、AGA対策を行う際には治療期間を考慮しておきましょう。

治療の中止の影響

繰り返しになりますが、AGAは進行性の脱毛症であり、何らかの対策を講じなければ症状を止めることはできません。
その為、治療を中止するとそれまで治療により改善した頭髪も元に戻ってしまいます。

治療中止の様々な理由

AGA治療も効果の実感までに時間を要するため、十分な効果が得られる前に治療を放棄してしまうこともあるでしょう。

また、決められた期間の継続治療の結果、満足いく効果が得られないことで治療を中止する方もいるかもしれませんが、何れにしても自己判断での中止はお勧め致しません。

出来る限りAGA治療を中止する場合には医師と相談の上で中止しましょう。

なぜならば、AGAは症状の進行度や本人の体質によって治療方法や治療期間に違いがあり、効果を実感できるタイミングは人によって異なるため、地道な継続治療が必要不可欠だからです。

また、治療を中止する方法も、急に薬を飲むのを辞めると抜け毛が急激に増えるリスクもある為、減薬(薬の量を減らす)などの方法もあり、医師に相談することで最適な辞め方を模索することもできます。

AGAは治療を行っている状況であっても中止すると再び症状は進行するため、中止期間が長期に及べばそれまでの治療が無駄になってしまう可能性があります。何らかの理由で治療の中止を検討する場合は、自己判断はせずに医師と相談した上で結論を出すようにしましょう。

AGA治療は一生続けるべきか

AGA治療においていつまで治療を継続すべきかは度々議論になるケースがありますが、基本的にはAGA治療は一生続ける必要がある訳ではありません。その理由としては以下2つの要因が上げられます。

頭髪の価値観の変化

一般的に頭髪の価値観は一生のうちで大きく変化をします。10代~20代は多感な時期でもありますし、外見の見た目にも気を使う場合が多く、頭髪に対しても重きを置いている場合が多いです。また30代も結婚を控える方も多く、同様に頭髪への価値観は重要です。

しかし、40代を過ぎると徐々に家庭や子育て、重要な仕事など、外見や髪の毛以外にも精神的に重要な要素が増える為、頭髪の価値観は10代~20代ほど重要視されないケースが増えてきます。その場合には、どこかでAGA治療を辞めて他の重要な物事に時間やお金を投資すべきかを検討するタイミングが少なからず訪れます。

周りの人との比較

薄毛のコンプレックスを感じるのは、内面的な問題だけでなく、外的な要因も大きく影響します。それは周りの人との毛量の比較です。例えば10代~20代の頃は同世代に薄毛になっている人は少ない為、自らが薄毛で悩む場合には、周りと比較して大きなギャップが発生するので、悩みも深くなる傾向があります。しかし、50代~60代ともなると自分の周りも半分以上の人が薄毛になります。そうなると、自分と周りを比較しても大きなギャップが発生せず、薄毛であることが「普通」になります。そして、この薄毛が普通を感じるタイミングでAGA治療を辞めるべきかを検討するタイミングが少なからず訪れます。

上記の要因が絡み合うことで、AGA治療は一生続けるのではなく、どこかのタイミングで治療を辞めていくことが一般的といえるでしょう。

AGA治療のゴール

AGA治療の到達点は人によって様々です。「現状の頭皮環境を維持したい」「薄毛や抜け毛を予防したい」「毛量を回復したい」など、各々の目的や目標によって対策や治療方法は変わってきます。

何となくでAGA治療を始めると、なんとなくで続けてしまい結局辞めどころが分からずお金だけが無駄になるケースがあります。

そうならない為にも、AGA治療を検討する場合は医師による診療を受け、「治療のゴール」「治療の方法」「治療の期間」など医師と綿密に相談し、自分自身にあった治療計画を立てることが重要です。

記事の監修医師

正木 健太郎銀座総合美容クリニック 院長
【略歴】
・平成14年 岡山大学医学部卒
・平成20年 銀座総合美容クリニック 開院
【所属学会】
・日本形成外科学会 正会員
・日本臨床毛髪学会 正会員
・日本再生医療学会 正会員
・日本美容外科医師会 正会員

監修医師の詳細情報