AGA治療の外用薬における効果と副作用について

 
AGA(男性型脱毛症)の治療においてエビデンス(根拠)のある治療方法には「外用薬」を用いた治療が存在します。薬剤を頭部に塗布する治療ですが、具体的にはどのような治療なのでしょうか?今回はAGA治療に用いられる外用薬についてご紹介します。

外用薬とは

外用薬を用いた治療は、頭皮に薬剤を直接塗布することでAGAの改善を促します。外用薬に配合されている成分は様々であり、それぞれ医療用医薬品*1や一般用医薬品(第1類医薬品)*2に分類されます。

AGAの外用薬を入手するためにはAGA専門のクリニックや美容皮膚科に通院する必要がありますが、一般用医薬品に指定されている外用薬であれば薬局やドラッグストアにて薬剤師から購入することが可能です。

外用薬の剤形には大きく分けて2つに分類されます。

● リキッド・ローションタイプ・・・液体状の外用薬で、一般的なタイプ。
● 軟膏・ゾルタイプ・・・半固形の製剤。生え際や液だれしやすい部位に有効。

*1「医療用医薬品」
医師の診断・処方に基づいた使用が義務付けられている医薬品を指す。 医師の処方箋がなければ販売できない処方箋医薬品と、処方箋がなくても薬剤師による販売が可能な医療用医薬品の2種類がある。

*2「一般用医薬品」
医師による処方箋を必要とせずに購入できる医薬品のこと。

*2「第1類医薬品」
一般用医薬品の1つ。一般用医薬品に存在するリスクに応じた3つの区分の中で、最も副作用の可能性が高い医薬品。購入する際は、薬剤師から指導および文書の情報提供が義務付けられている医薬品。

AGA治療薬の外用薬の成分

外用薬に配合されている成分は様々です。一般的に外用薬として使用され効果が期待されている有効成分には「ミノキシジル」「カルプロニウム塩化物」があります。現代のAGA治療は、症状の進行抑制と発毛の促進という2つの観点から治療を試みます。AGAの進行抑制には「フィナステリド」や「デュタステリド」 といったDHTの生成を妨げる成分が使用されることが一般的で、それをベースとして発毛促進に「ミノキシジル」「カルプロニウム塩化物」といった外用薬にこれらの成分が使用されることがほとんどです。

ミノキシジル外用薬とは

高血圧に対する治療薬として開発された薬剤で、副作用に多毛が認められたことをきっかけに薄毛治療薬として用いられています。1988年に米FDAで発毛剤として承認され、日本では1999年に一般用医薬品として承認されました。医療機関のAGA治療でも使用されている成分で、市販品は大正製薬のリアップが代表的な商品です。最近ではアンファー社からリアップのジェネリック薬としてスカルプD メディカルミノキ5が発売されました。発毛効果に関して国から認可されている為、一般的に「発毛剤」とも呼ばれています。

ミノキシジル外用薬について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

カルプロニウム塩化物外用薬とは

皮膚の血行をよくするとされる成分。脱毛症治療に用いられることが多いです医療機関のAGA治療では用いられることはほとんどありませんが、一部の医療機関で女性の薄毛治療などで用いられるケースがあります。市販品は第一三共ヘルスケアのカロヤンが代表的な商品です。

AGA治療における外用薬の推奨度

日本皮膚科学会が定める「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」(以下、ガイドライン)には、AGA治療における代表的な治療方法が臨床試験とともに紹介され、それぞれの実用性が推奨度別に評価されています。

推奨度の分類(推奨度は必ずしも上記の判断基準に一致しないものもあります)

● 「A」行うよう強く勧める  
● 「B」行うよう勧める  
● 「C1」行ってもよい  
● 「C2」行わないほうがよい  
● 「D」行うべきではない  
ガイドラインでは上述の3種の外用薬成分についても言及されています。それぞれの推奨度は以下の通りです※。

● ミノキシジルの外用:推奨度「A」 行うよう強く勧める
● カルプロニウム塩化物:推奨度「C1」 行ってもよい

ガイドラインによる推奨度の評価は治療薬の有効性を判断する指針になります。外用薬として用いられる有効成分の中で、推奨度の最も高いミノキシジルは市販の発毛剤にも多く使用されています。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版について詳しくはこちらをご覧ください。

出展:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

また、専門のクリニックや美容皮膚科で処方される外用薬も有効成分にミノキシジルを配合した治療薬が多いため、外用薬治療を検討する場合の第1選択肢となるでしょう。以下に代表的な外用薬の有効成分についての詳細を記載します。

※男性に対する推奨度のみを記載しています

ミノキシジル外用薬の効果

血圧を下げるための降圧剤として開発されたミノキシジルには、多毛という副作用がありました。この副作用をきっかけに発毛剤としての開発が進み、現在ではAGA治療薬として使用されています。ミノキシジルは降圧剤として使用されていた経緯から血管拡張作用が認められています。

以前はこの血管を拡張することにより血流の促進・改善効果を期待することができるため、髪の毛の根元に存在する毛乳頭や、髪の毛を生成する毛母細胞に影響を与えると考えられていましたが、現在では毛包に直接作用し、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進することによって発毛作用を示すことが分かっています。

AGAを発症すると毛母細胞の分裂が抑制され、ヘアサイクル*3における成長期が短縮されてしまいます。ミノキシジルは毛母細胞に作用してヘアサイクルを延長する働きや、毛乳頭を活性化させる成長因子*4の産生を補助する働きがあるとされています。

ヘアサイクルついて詳しくはこちらをご覧ください。

詳しくはこちらの記事をご覧ください

ミノキシジルの正確なメカニズムはまだ解明されていない部分もありますが、上述の作用によってAGA改善効果が期待できると考えられているのです。

*3「ヘアサイクル」
髪の毛に存在する一定のサイクル。成長期・退行期・休止期からなり、ヘアサイクルが正常に機能することで髪の毛の健康は保たれている。

*4「成長因子」
体内で特定の細胞増殖や分化促進といった働きをするタンパク質の総称。

効果の検証データ

ミノキシジルの有効性に関して、924名の男性被験者を対象とした観察期間24週のシステマティック・レビュー*5が記載されています。濃度の2%ミノキシジルではプラセボ*6に比べ、脱毛部の総毛髪数がベースラインより平均で20.90本と有意に増加しています。ミノキシジル外用の有効性は高い水準の根拠が示されたため、ガイドラインでは使用を強く進めています。

*5「システマティック・レビュー」
複数の研究文献を網羅的に調査し、バイアスによるデータの偏りを除いたうえで評価分析したもの。

*6「プラセボ」
偽薬のこと。有効成分が含まれていない薬剤を摂取することで症状が改善することがある。プラセボ効果(偽薬効果)と呼ばれ、治験の際など治療薬の正確なデータを得るための指標として用いられる。

副作用

毛包の炎症や落屑(表皮の角質が剥がれる)、接触性皮膚炎(かぶれや湿疹)、また、もともと血圧の薬であることから胸の痛みなど循環器系に影響がある場合があります。副作用を感じたら処方を受けた薬剤師や医師に必ず相談しましょう。

カルプロニウム塩化物外用薬の効果

カルプロニウム塩化物とは、フロジン外用液やアロビックス外用液の主成分として使用されている有効成分であり、血管拡張作用が認められています。AGAに限らず円形脱毛症などの脱毛症や皮膚の色素が抜ける疾患である白斑にも有効とされています。医療用医薬品に分類されているため専門のクリニックや美容皮膚科で処方してもらう必要があります。

血管拡張作用により血流を改善し、毛根に栄養を届きやすくすることによって髪の毛の成長を促す効果が期待されています。

効果の検証データ

カルプロニウム塩化物の有用性に関しては、AGAに対する4件の症例集積研究*7と1件の非ランダム化比較試験*8が実施されています。

5%カルプロニウム塩化物を用いた6名の男性被験者を対象とした観察期間1ヵ月間の二重盲検非ランダム化比較試験において、6例中4例で脱毛減少あるいは発毛が確認されています。  

10%カルプロニウム塩化物外用薬を用いた4名の男性被験者を対象とした観察期間77日間から129日間の症例集積研究では、4例中2例で脱毛の抑制および軽度の発毛効果を示し、有効性が認められました。  

また、1%カルプロニウム塩化物にカシュウチンキ*9、 チクセツニンジンチンキ*10の生薬などを添加した外用薬を用いた、30名のAGA罹患者を対象とした観察期間3ヵ月の症例集積研究において、有効以上 20%、やや有効以上60.0%という結果が報告されています。

さらに2%カルプロニウム塩化物に上記の生薬とヒノキチオール※11等を添加した育毛剤を用いた、75名の男性被験者及び11名の女性被験者を対象とした観察期間 24 週間の症例集積研究においては、男性26.7%、女性54.5%という改善率が記載されています。

ガイドラインではこの結果を受けて、現段階での有用性は十分に実証されていないが、国内の診療実績を考慮して行ってもよいと結論づけています。

*7「症例集積研究」
特定の治療法を複数の被験者を用いて経過や結果を観察し、データとしてまとめた研究

*8「非ランダム化比較試験」
新薬などの臨床の際に、新薬を使用したグループと通常薬を使用したグループを意図的に分けて行う試験。

*9「カシュウチンキ」
皮脂抑制作用や抗酸化作用があるとされる植物の成分を含んだ製剤

*10「チクセツニンジンチンキ」
毛乳頭細胞を活性化させるといわれる植物の成分を含んだ製剤。

*11「ヒノキチオール」
特定の植物に含まれる化合物。抗菌作用や炎症を鎮める作用があるとされる。

副作用

皮膚の赤みや痒み、局所発汗、まれに全身発汗や悪寒を催す場合があります。副作用を感じたら処方を受けた薬剤師や医師に必ず相談しましょう。

外用薬と育毛剤の違い

一般的に育毛剤として市販されている商品は医薬部外品です。医薬部外品として認められる効能効果には制限があり、人体に対し作用が緩和な「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」に範囲に限定されています。

一方でミノキシジル外用薬は国内で唯一、厚生労働省に「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」といった発毛の効能効果が認められており医薬品のうち第1類医薬品に指定されています。

主に薄毛の症状を予防して髪の毛や頭皮の健康を維持することを目的としています。そしてミノキシジル外用薬である発毛剤は薄毛を治療し改善することを目的としており、育毛剤とは明確に目的や効果が異なります。

AGA治療における外用薬の考え方

AGA外用薬であるミノキシジル外用薬は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」の推奨度Aの中で、唯一市販されている薬であり、クリニックで処方を受ける必要がないという点において比較的入手が容易であり、AGA治療においてのファーストチョイスとして始めやすいというメリットがあります。

しかし手軽さの反面、ミノキシジル外用薬(発毛剤)だけで治療を開始してしまうと、進行性の薄毛であるAGAにおいて、ヘアサイクルが短命化し髪が抜けやすい状態で発毛剤で新たな髪を生やしても、またすぐに髪が抜けてしまいます。その為、まずAGA治療の第1の選択肢として選ばれる方法はフィナステリドやデュタステリドなで抜け毛を抑え、薄毛の進行を止める内服薬治療を選択することが重要です。

AGAに治療に用いる内服薬について詳しくはこちらをご覧ください。

詳しくはこちらの記事をご覧ください

記事の監修医師

正木 健太郎銀座総合美容クリニック 院長
【略歴】
・平成14年 岡山大学医学部卒
・平成20年 銀座総合美容クリニック 開院
【所属学会】
・日本形成外科学会 正会員
・日本臨床毛髪学会 正会員
・日本再生医療学会 正会員
・日本美容外科医師会 正会員

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